対象犬 3カ月 プードル 雌 ペットショップ出身
当初問題行動 人の手にたいしての甘噛み
このプードル(仮にハナちゃん)は、いたって健康な子犬である。
しかし、活発であるため家の中に放すと元気に走り回り、手当たり次第に噛みつくということである。
家庭環境は、一家建てに住む4人家族(父、母、小学生の子供1人、幼稚園生の子供1人)である。
ハナちゃんは、すべての家族に対して甘噛みをする。子犬の歯は細くて鋭いため噛まれると痛い。
なので、母親は「幼い子供たちが怖がってしまって困っている」ということで相談をうけた。
ハナちゃんの甘噛みは、正常な行動である。
それに対して家族がとっていた行動は、“手を噛みつかれたらマズルをギュッと掴む”という方法であった。
しかし、噛みつきはいっこうに収まらず、むしろ“ヒットアンドアウェイ“のように、ちょっと噛んではすぐに逃げるという行動に発展してしまった。
要するに、ハナちゃんは「近づくとマズルを掴まれるからいやだ」と考えるようになったのである。
そこで飼い主に対して、2つアドバイスをおこなった。
1、コング(食べ物をなかに詰められるゴム製のおもちゃ)を使用する
2、遊び方を変える。
① まずコングにふやかしたフードを詰めて準備をする。つぎにコングを手に持ち、床に座る。ハナちゃんが側に来るのを待つ。食べ物が好きであれば寄ってくる。その後、コングは膝の上置くようにして持ち、コングに詰めたフードを食べさせる。
それをしばらく繰り返す。ハナちゃんが抵抗なく膝の上にのってくるようになれば、コングに詰めたフードを食べている隙に“優しく撫でる”。
「人に触られること」と「フードを食べること(良いこと)」を結びつけ、触られることが好きになるために実施した。
これをすべての家族が行う。
② ハナちゃんは子供たちと追いかけっこをして遊んでいた。
子供は噛まれるのがいやなので逃げていただけであるが、ハナちゃんにとっては楽しい遊びとなっていた。
家の中での追いかけっこは、イヌを興奮させ過ぎるだけでなく、走り回る習慣も身につくので良くない。
そのため、長い紐のさきにおもちゃを取り付けた道具で遊ぶことにした。手と犬の口とが離れて遊べるように工夫することで、お互いが安全に楽しく遊ぶことができるようになった。
結果:甘噛みは2週間ほどでおさまった。
大きな要因はすべての家族が2つのアドバイスを熱心に実行してくれたことにある。
母親曰く「膝の上でフードを詰めたコングを持って子犬に食べさせる方法は、子供でも簡単にできた。テレビを観ながらしていました」ということである。
続けてもらうことで、膝の上で寝るようにもなり、以前よりもずっとおとなしくなっていた。
人の手に甘噛みをしなくなっので、子供たちはハナちゃんを怖がらなくなった。
補足:
甘噛みにたいして、「マズルを掴む」という方法には、意味がない。
むしろ悪影響を生み出すだけである。
しかし、この方法が広く蔓延している背景には、成功事例があるからである。
実際に「マズルを掴む」ことで噛みつきがなくなったという話は聞くが、そもそも大人しい犬であった可能性が高く、他の方法でも上手くいったと考えられる。
マズルを掴むことで、犬に“人の手は嫌なもの”だと認識されてしまうことを考えれば、やはりマズルは掴むべきではない。
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